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「シリウス」の伴星について


 「シリウス」が「赤かった」という記録があり、これについて「シリウス」自体は主系列という安定期にある星とされていますから、そのような色変化や増光などがあったとは考えにくいのが事実です。ただし鍵を握っているのは「シリウス」の「伴星」です。

 「シリウス」には伴星がありこれは「白色矮星」であるとされています。「白色矮星」は「新星」爆発の残骸といえるものであり、「赤色巨星」が爆発現象あるいは質量移動を起こした後に残るものです。(ただしその質量は太陽の1.4倍を超えないとされます。それを超えた場合は「中性子星」になるというわけです。)
 「シリウス」とその伴星は連星系を形成していますが、その公転周期は五十年といわれています。この周期から考えられる双方の距離は「20天文単位」と計測されており、太陽系でいえば「天王星」軌道付近となります。(ただし、「離心率」が大きいため「8.1天文単位」から「31.5天文単位」まで変化するようであり、近点では「土星」軌道よりも近くなります。これは確かに「近接連星」というほどの距離ではないかもしれません。しかし伴星が元「赤色巨星」であったとするとそのサイズはかなり大きかったものと見られ、両星は以前は今以上に接近していたという可能性があります。)
 
 一般に連星系において一方が終末期近い「赤色巨星」である場合、「進化」の過程で「膨張」し、終末期には大きさがいわゆる「ロッシュ限界」(※)まで達する場合があり、そうなると「内部ラグランジュ点」(両星のロッシュローブ…ロッシュ限界点をつなげてできる殻を指す…の接するポイント)を通って伴星側に質量が移動する現象が起きることとなります。主星側が伴星に対して質量が圧倒的に大きい場合この「ラグランジュ点」もかなり伴星側に近い場所にできることとなり、このような場合、主星側から質量がもたらされる伴星は、条件によってはそのまま「質量増加」という結果になる場合もあり得ます。その結果「伴星」はやや質量が増加し、発生エネルギーも大きく増加した結果1万度に達するほどの高温となる場合もあると考えられるわけであり、このような現象が「シリウス」に起きたとみることもできるでしょう。
 シリウスに金属元素が多いという観測結果があるようですが、基本的に「金属元素」や「重金属」元素は「重い星の内部」でしか作られないものであり、その金属元素は「赤色巨星」(これは重い星)からもたらされたものと考えると理論的に整合するといえます。

 ところで「シリウス」の現在の状態は「白色矮星」と「主系列」の組み合わせであるわけですが、上に述べたようにそれ以前は「巨星」と「主系列」という組み合わせであったこととなります。その場合「主星」である「巨星」(現在の伴星)がロッシュ限界に先に達することとなっていた可能性が高いものと推察されます。ところが観測された事実からはこのような組み合わせは一例も発見されていないとされます。すべての近接連星系では質量の大きい星、つまり主星が「ロッシュ限界」内にあり、質量の小さい方、つまり伴星が「ロッシュ限界」に達しているのです。この逆パターンつまり「シリウス」の以前の状態の連星系は確認されていないのです。(これをその代表的な星の名称から「アルゴルパラドックス」と称するようです)これについては各々の星の「進化」のスピードの違いで説明されています。
 つまり、先に「主星」が進化・膨張して「ロッシュ限界」に達すると質量の小さい進化の遅い星の方へ(ラグランジュ点を通じて)質量移動が起こり、それにより主星の側の「ロッシュ限界」が小さくなり(質量が小さくなるため)、さらに質量移動が促進されることとなります。ついには伴星よりも質量が小さくなってしまい、そうなると急激な膨張はほぼ収まり、その結果「ロッシュ限界内」に止まる新たな主星と「ロッシュ限界」に達している新たな伴星という組み合わせが発生するわけです。
 この状態でさらに伴星側の進化が進行し、ついには「中心部」から供給されるエネルギーが急激に減少すると重力崩壊を起こし、その結果「白色矮星」が形成されることとなります。これが今のシリウスの状態と思われますが、この段階では今度は新たに主星となったシリウス側から伴星へ質量の逆移動が起き始めるとされ、伴星である白色矮星の表面に燃料が降り積もる事態となります。このような状況が続くと「時折」燃料に火が付いて核融合反応が起きることがあります。これを「再帰新星」と呼びますが、シリウスもそうなのかもしれません。そのような事象が起きて増光していた期間がちょうどエジプトやローマ時代なのかもしれず、この期間はかなり長期間「昼間」でも見えていたという可能性が考えられます。
 これを推察させるものがNASAの「X線衛星」である「チャンドラ」が得たデータであり、それによれば「X線」の領域では「伴星」の方が相当程度明るいと言うことが明らかとなっています。(但し「軟X線」であり、核反応に伴うものではありません)さらに紫外領域でも同様の事象が確認されています。
 同様の現象は「ケンタウルス座アルファ星」(アルファ・ケンタウリ)とその伴星である「アルファ・ケンタウリb」(これはプロクシマ・ケンタウリとは異なる)でも同様に確認されており、「X線」の領域では「アルファ・ケンタウリb」の方が明るいと観測されています。つまり、ここでも伴星側に向けて質量移動が起きているらしいことが推察されるわけです。このように主星が主系列の星である場合でも(大量ではないものの)伴星に向かって質量移動があることが強く推察されているわけですが、これらの場合質量移動の量と速さは、従来考えられていた「赤色巨星」と「伴星」という組み合わせのように大量で高速ではないものの、本質的に同様の現象であると思われ、周期は長いもののやはり蓄積した質量がある量と圧力などに達するなど条件が整えばやはり「新星爆発」現象を起こすという可能性を強く示唆するものです。

 さらにいえば、新星爆発現象に至る以前に相当量のガスが連星系全体を覆うような状況があったという可能性も考えられます。伝承を分析すると「シリウス」の場合「赤かった」のは「昼間も見える」ほどの増光の以前からであったという可能性があり、その場合その「赤かった」と理由として考えられるのは「水素ガス」の電離によるものであり、「Hα線」(※2)と呼ばれる輝線の影響ではないかと思われます。
 高温の星(この場合「シリウス」の伴星の方であり、その表面温度は2万度を超えています)の近くに「水素ガス」があると紫外線の影響などにより「水素ガス」が電離し輝線を発するようになります。(細かいメカニズムは省きます)特に顕著なのがHα線の「赤色」の輝線です。「シリウス」星系の場合も「伴星」から紫外線が出ていることが確認されていますが、周辺に水素ガスが大量に滞留していたとすると地球との距離も近い事もあり電離した水素ガスが放つ「Hα線」による「赤い色」が目立ったとして不思議ではないでしょう。この状態が長く続いていたところに燃料である水素ガスが一気に核反応を始めたとすると事態を整合的に説明できそうです。ただし、これ以上は当方の力量をはるかに超えますので、可能性の指摘にとどめます。
 ただし、もし新星爆発を起こしたとすると絶対等級で10等級以上の増光があっても不思議ではありませんから、昼間も見えたとしても自然です。そもそもシリウスは太陽系至近の天体であり、そのような増光があれば容易に昼間も確認できると思われるわけです。


(※1)別の天体(剛体)が安定して存在できる限界距離のこと。これ以内では剛体各部に働く引力(潮汐力)が大きく異なることとなり、破壊されてしまうこととなります。(例えば1994年に木星に接近した際の「シューメーカー・レビー彗星」のように複数の天体に分裂することとなります。)
(※2)電離した水素原子が発する輝線スペクトルのひとつであり、波長は6563Å(オングストローム)。


(この項の作成日 2016/03/13、最終更新 2017/11/29)